さてさて、つづきです。
しばらくは何事もなく、
多少大きめの振動を感じながらも
夜行列車はガタゴトと進んでいきました。
知らぬ間に寝てしまっていた僕が目覚めたのは、
奇妙な物音に気づいたからでした。ギ、ギ、ギーーイーーィーー……イー……プッシュー……
ガッゴンッ……
ブルルルウウウ……
どうやら列車が止まったようです。
カーテンをめくって外を見ますが、
プラットフォームや駅舎などは見えません。
隣の線路には一両だけのディーゼル機関車が
止まっているほかは、灯りもあまりなく
静まり返っています。
(これは?実は鉄道員たちも給料が遅配してたり、で金に困っていて
盗賊とグルになってるから、こんなところで止まって襲いやすくしてるんやろか?)
などと、少し身構えていると
再び、ゆっくりと列車は動き始め……
……た、かと思うと、
しばらくしたところで再び停止。
今度は、建物が見えます。
まさか、盗賊のアジト?
いや、駅名は判然としませんが、どうやら駅舎……に見えなくもない。
でも、アナウンスも何もない。
(まぁ、それは当然か)
↓貨車が息を潜めて
佇んでいるだけです。
そのまま二時間程
うつらうつらしている間も
動く気配はありませんでした。
後から考えると
要は夜行バスとかにもある時間調整やったんやなぁ、と
分かるわけですが、
その時は、もしガラスを割って入ってきたら
この頑丈なチェーン錠が逆に命取りにならないだろうか?
などと、色んな襲撃と脱出パターンを考えてるうちに……
寝てしもてました。
目覚めた時には
列車は再び快調に走っていて
行けども行けども農村地帯。
変化がなさすぎてスピード感がわかりません。
てなことを思っていると、
急に着きました。
クラコフのようです。
車掌のワキガノフが
ドンドンドン!とドアを叩きます。
ワキ「オハヨー!」
そういえば、ドイツ→チェコの時も
今回も、パスポートに検印、どころか
所持確認すらされませんでした。
密入国し放題です。
チェーン錠を外し、これもワイヤーでベッドに固定していた
リュックをほどいたり、荷物を整理してると、
ワキガノフが「車庫に入れるから、早ク降リロ」と急かします。
あんたが、ドロボードロボー言うから
厳重にやったんや、ちょっと待ってくれ、と
思いながら、結局その後一言も喋らなかった
エミリーとも別れて
降り立ちました。
クラコフは雨、でした。
どこが盗賊列車やねん!
と、文句がある方は
ポーランド国鉄車掌の
ワキガビッチ・ワキガノフさん(推定41歳)まで
連絡先は各自調べてください。
でも、「何もなかった」と書いてあったのを信じて
同じ路線の夜行列車に乗って
今度はホントに襲われても責任は持ちませんので
あしからず。
そして
<クラコフ編1>へ
つづく……のか?
【関連する記事】
そない有名ですか。
確かに東欧の夜行では値段も安いし一等にした方がいい、と
色んな本に書いてありましたが、余計狙われそうやし、
まあ何とかなるやろう、と4人クシェット(コンパートメント)
を選んだのですが。何もなくてよかったですわ。
>ワキガノフ車掌の奥さん
……ということは、夫婦揃って
香ばしかったってことでしょうか?
エミリーさんは期待はずれでした。
あれは、モーホンバニ……
なんと申しましょうか……
なかなか滋味溢れる香りでございました。
悪い人ではなかったと思います、たぶん。
エミリーさん期待させてしまって
すいませんでした。