2007年04月05日

黒い音、青い想い

前にも書いたような気がしますが、
黒人音楽が好きです。

黒人音楽って?
黒人がやる音楽?
白人や日本人がやってる黒人音楽は何人音楽?

まあ、なんちゅうか……
アフリカ音楽を母に、
ヨーロッパの楽器と音楽構成を父にもって
北アメリカやカリブ海で発達した音楽形態、
とでも申しましょうか。

中学、高校あたりで、
モータウンやロックンロール黎明期を入口にして、
徐々にハマっていったわけですが、
なかでも……忘れもしない……えーっと……

あれは……

そのー……

あ、鯉の口みたいなお爺さんが死んだ年ですわ。

Boogie Down Productions という人達の
YOU MUST LEARNという曲のミュージッククリップを
MTVで見かけて、言い知れぬ衝撃を受けました。

歌詞の意味の細かいところまでは分からなかったのですが、
早速レンタルCD屋に出かけました。
残念ながら、お目当ての曲はなかったので、
Criminal Mindedというアルバムを借りてきました。

間もなく新譜EDU-TAINMENTも出て、ズブズブと……。
それから5、6年はBDPや
KRS-ONE(ケーアールエスワン)の名前を見ると
手当り次第に手に入れてましたね。

何がそんなに?

1つ、うねるベースとKRSの太い声
  (僕は、こっからレゲエに流れました)
2つ、歌う(というか喋る)内容の熱さと論理の面白さ
  (Malcolm XやMarcus Garvey、
    Black Pantherを学ぶきっかけに)

ラップはよう分からんとか言う方も
一度聞いてみたらどないでしょうか?
でもまあ黒人音楽全般が苦手な人には、
やっぱりちょっと取っ付きにくいかもしれません。

ちなみに歌詞カードの和訳(と英語詞も!)は
全くあてになりません。
頑張って聞き取るか最近では
こんなサイト(ソロはこちら)があるので、
自分で訳してみましょう。英語の勉強にもなってラッキー!

ついでに好きな詞をいくつか抜き出してみますね
(訳は自己流。マチガイあったら御免なさい)

まずは、AH-YEAH(アルバム<KRS-One>より)

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Ah yeah アーイェー
That's whatcha say when you see a devil down
それは悪魔が倒れるのを見た時にいう言葉

Ah yeah アーイェー
That's whatcha say
    when you take the devil's crown
それは悪魔の王冠をひっぺがした時に叫ぶ言葉


Ah yeah アーイェー
stay alive all things will change around
生き続けろ、いつか全ての状況は変わるさ
Ah yeah, what? Ah yeah! 
アーイェー 何だって? アーイェー!

So here I go kickin' science in ninety-five
 さあ行くぞ、95年式の言葉の科学をブチかましてやる
I'll be illin, parental discretion is advised still
 俺はイカレてる、相変わらず保護者の注意が必要だぜ
 (ヒップホップのCDにParental Advisory
  書かれてるのを皮肉ってます)
dont call me nigga, this MC goes for his
 俺をクロンボと呼ぶな、
  このMC(ラッパーのこと)は独自のやり方で行くんだ
Call me God, cause that's what the black man is
 むしろ神と呼べ、なぜなら
  それが黒人の存在を表すにふさわしい言葉だからな
Roamin through the forest as the hardest lyrical artist
 最も強力な言葉の芸術家として森を歩き回ってるんだ
Black women you are not a bitch you're a Goddess
 黒人女性、君たちは売女なんかじゃない、女神だ
Let it be known, you can lean on KRS-One
 さあ教えてくれ、KRS-Oneに頼りたいヤツ
Like a wall cause I'm hard, I represent GOD
 壁のように頼りがいがあるんだ、そう俺は神の代表
Wack MC's have only one style: gun buck
 ろくでもないMCたちはバカの一つ覚えで
  銃をぶっ放す(ような曲ばかり)
But when you say, "Let's buck for revolution"
 でもいざ「その銃で一緒に革命を起こそうぜ」
  って言った途端
They shut the fuck up, kid, get with it
 ヤツらは黙り込むんだ。ガキども、ちょっとこっち来い
Down to start a riot in a minute
 すぐに暴動を起こそう
You'll hear so many Bowe-Bowe-Bowe,
 you think I'm Riddick
 沢山のバンバンバン(銃声)が鳴り響くだろう。
 冗談を言ってると思うか
While other MC's are talkin bout
 up with hope down with dope
 他のMC達がヤクに浸って夢物語をクッチャベってる間
I'll have a devil in my infrared scope, WOY!
 俺は赤外線スコープに悪魔を捉えてるんだ。
 ズギューン!
That's for calling my father a boy and,
 KLAK KLAK KLAK!
 これは、俺の父を「小僧」と呼んだヤツらに。
 パンパンパン!
That's for putting scars on my mother's back, BO!
 これは、俺の母の背中を傷だらけにしたヤツらに。バン!
That's for calling my sister a hoe, and for you
 これは、俺の姉を「売春婦」と呼んだヤツらに。
  そしてお前には、
BUCK BUCK BUCK, cause I don't give a motherfuck
 ドンドンドン!をくれてやる、俺は決してヘマをしないからな
Remember the whip, remember the chain,
(背中を打たれた)鞭のことを忘れるな、
(奴隷として繋がれていた)鎖のことを忘れるな、
remember about rope and
(リンチで首を吊られた)縄のことを忘れるな
you black people still thinkin about vot-ing
 お前ら黒人はまだ選挙(での革命)を考えているのか
Every president we ever had lied
 今まで全ての大統領が嘘をついてきた
You know what kinda glad Nixon died!
 お前らにニクソンが死んだ時の喜びが分かるか?

Chorus

This is not the first time I came to the planet
 この惑星に降り立つのは実は初めてじゃない
But everytime I come, only a few could understand it
 いつ来ても、俺のことを理解できたのは少数だった
I came as Isis, my words they tried to ban it
 イシス(エジプトの豊穣神)として来た時、
  我が言葉は追放された
I came as Moses,
 they couldn't follow my commandments
 モーゼとして来た時、人々は十戒に従わなかった
I came as Solomon, to a people that was lost
 ソロモン王として来た時、人々は…
(訳し方分からん!教えて〜負けても迷っても変ですよね)
I came as Jesus, but they nailed me to a cross
 イエスとして来た時には、人々は私を十字架に架けた
I came as Harriet Tubman,
 I put the truth to Sojourner
 ハリエット・タブマン(「地下鉄道」で300人もの
 南部の奴隷を自由にした黒人女性)
 として来た時は、真実を滞在者に教えた
Other times, I had to come as Nat Turner
 ある時は、ナット・ターナー(19世紀の黒人反乱奴隷)
  として来なければならなかった
They tried to burn me, lynch me and starve me
 彼らは、私を焼き殺そうとし、リンチし飢えさせた
So I had to come back as Marcus Garvey, Bob Marley
 だから私はマーカス・ガーベイ
 (ジャマイカのアフリカ回帰運動の指導者)として、
  またボブ・マーリーとして戻って来なければならなかった
They tried to harm me, I used to be Malcolm X
 彼らは私を迫害しようとした。マルコムXでいたこともあった
Now I'm on the planet as the one called KRS
 そして今は、この惑星にKRSと呼ばれる者として存在している
Kickin the metaphysical, spiritual, tryin to like
 純正哲学的に、霊的に、
get wit you, showin you, you are invincible
 お前自身が無敵で揺るぎないものだと教え導くんだ
The Black Panther is the black answer for real
 黒豹党は黒人にとって現実的な答え
In my spiritual form, I turn into Bobby Seale
 俺の霊的形態にはボビー・シール
  (黒豹党の創始者)が宿っている
On the wheels of steel, my spirit flies away
 鉄の車輪(レコードプレーヤーのこと)にのって、
  俺の魂は遠く羽ばたいて
and enters into Kwame Ture
 そしてクワメ・トゥレ(「ブラックパワー」を
  提唱した黒人活動家ストークリー・カーマイケルの別名)
  の中に入り込む

Chorus

あらら、けっきょく一曲丸まま載せてしもた。
ちょっと引きましたかね。
取りようによってはテロリズム、
暴力革命礼賛まっしぐらですからね。
というか正に焚き付けてるわけです。

蜂起せよ

「古き良きアメリカ」なんて軽々しく口にできません。
誰のために良く、誰がどういった仕組みで
誰のことを踏みつけてきたのか。
別に僕はテロリズム(Terror=「恐怖」主義)を
幇助したり称賛するつもりはありません。
が、そのような道に走らざるを得なかった人々の
気持ちというか経緯があったんじゃないかな、
とも思うのです。
イスラム教徒が来世を信じているからと言って、
何の抵抗も「正義感」もなく、
急に自分の命を断つ決断を下すとは思えない。
(厳密に言うとテロリスト側にも
 権力者がいて、事態は複雑なのですが……)


これはアメリカ黒人だけのことでなく、
アイルランドでもルワンダでもパレスチナでも
南アフリカでもイラクでも北朝鮮でも
そして、ここ日本でも
今までに起こってきたこと、
これからも起こりえること、です。

弱きもの、少なき者への想像力を働かせなければならない、
というつもりで歌詞を載せました。

ニクソンが死んだ時に喜んだ黒人の気持ち。
911の時に喝采をあげたパレスチナの人々の気持ち。
原爆投下を知って喜んだ日本帝国植民地の人々の気持ち。

理解できないと思う気持ちこそ
理解しようと努めなければ


もちろん同時に、暴力革命や蜂起の結果が、
「麦の穂をゆらす風」「マイケルコリンズ」でも描かれた
アイルランド紛争を例にとるまでもなく、
決して幸せを招くものにならない、ということも
頭ではわかってるつもりです。


青くてすみません。

こないだ宮崎駿さんが出てた番組のビデオを
見る機会があったのですが、印象に残った言葉が幾つか。

曰く、「理想を持った現実主義者でありたい。
    理想のない現実主義者はいっぱいいるんだけど、
    それは最低だってことだからね」

なんか説教じみてきたので終わります
最近、「麦の穂をゆらす風」「ブラックブック」
「パッチギLove&Peace」と戦争と平和に関する映画を
観たせいということにして許して下さい……。


おまけ:
去年アメリカのどっかでやったらしいライブ(3分40秒ぐらいから)で
熱く女性について語るKRSにも胸打たれました。

<その部分の大意>
女性をBITCHと呼ぶヤツぁ俺がぶっ飛ばす
LADYと呼べ!

Love
And
Developing
Yourself (自分を愛し高めるひと=女性)
なんだ!




そんなんでね……どんなんや
posted by 小林聖太郎 at 04:23| 大阪 ☁| Comment(3) | TrackBack(2) | にっき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
恥ずかしながら、先月初めて「パッチギ!」を見て、
あまりにも歴史を知らなさ過ぎる自分を恥じながらも、
本を読む程度ですが勉強している最中に
今日のお話だったので、
なんてタイミングなんだろうと驚いてしまいました。
忌まわしい歴史を消すことはできませんが、せめてこれから、
もっともっとたくさんの人が、
人それぞれのいろんな個性を認め合える世の中になりますように願うばかりです。
Posted by たま at 2007年04月06日 00:16
>たまさん
そうですね。
そんな日が来ることを本当に願います。

またしてもKRS−ONEの詞(R・E・A・L・I・T・Y)から
" We say peace(/piece) 'cause that's we realy want 
A piece of the pie that America flaunts"
「俺ら黒人が「ピース!」って言い合うのは、
 それ(平和/分け前)が本当に欲しいから。
 「アメリカ」が見せびらかしてるパイ(富)の分け前を」

しかし、差別って本当に根深いんですよね。
南アフリカのアパルトヘイト反対活動家でもあった、
黒人写真家と会った時、つい習いたてのスワヒリ語で
挨拶したら「俺らは中央アフリカ人とは違う。
アイツらは黒い、日に焼けて目が黄色い、臭い」って、
ちょっと嫌そうに言われて度肝を抜かれたことがあります。
(え……だってアパルトヘイトって何やったっけ?)てな感じで。

総論では差別に反対とか貧困をなくそう!
なんて皆言うのですが、僕も含めて、自分や自分の身内の
利害が直接絡んでくると、なかなか人は聖人になれないものなんでしょう。

この世は何のために存在するのか時々わからなくなります。
もしかして、ものっすごい大きいオッサンが、
オッサンの健康のために
プルトニウムか何かを
培養しようとしているのかもしれません、
まるで僕らはビフィズス菌みたいなもので。
Posted by kobayasi at 2007年04月06日 01:20
>俺らは中央アフリカ人とは違う。
根深い、まさしくそうですよね。

>この世は何のために存在するのか時々わからなくなります。
この間、世界の民族紛争の地図を見て落ち込みました。
普段、地球はとても広く感じるのですが、
その一枚の世界地図を見た時は、何故か地球がとても小さく見えました。
でっかいオッサンの例えがわかるような気がします。
Posted by たま at 2007年04月06日 02:53
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Excerpt: 憲法が謳う自由と平等、アメリカの夢と現実。奴隷たちの七月四日を問いつめたダグラスと南北戦争後も遍見と格闘した男たち女たち。視野をアフリカへ世界へと拓いたガーヴィー。公民権闘争とその後の激動の時代をへて..
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Tracked: 2009-02-28 18:53

『黒人大統領誕生をサッチモで祝福する』 平岡 正明 (著)
Excerpt: 黒人大統領誕生の萌芽はすでに、1917年のニューオルリンズにあった!?ルイ・アームストロングによってなしとげられたジャズの最初の革命のなかに、 21世紀には実現するであろう黒人権力の論理が埋伏されてい..
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