なかなか撮影に辿り着けませんが……。
<前回のあらすじ>
飛行機の時間があるためか
ハイテンション、ハイペースの秋野さんに
引っ張られ、生憎の雨もものともせずに
ズンズン進むスチル撮影。
民家博物館を出て小走りで向かった先は……。
つづいては、本日最後の場所。
といっても同じ公園内にある乗馬センターです。
違う日という設定なので、衣裳を替え……
なければいけないのですが、
先に行って着替え場所を確保しているはずの
助監督M君は見当たりません。
ズンズン小走りの秋野さん
「どこで着替えますのん?」
小林「ええっと……今ちょっと押さえてる部屋が……どこかなぁ……」
と言いながら、ひとまず二階の受付にあがりますが、
誰も見当たりません。
秋野「よろしわ、トイレで着替えてきます」
パッと替えの衣裳を掴み女子トイレに消える秋野さん。
しかし、こうしてはおれません。
心の中で感謝の手を合わせながらも、
肝心の撮影場所である下の厩舎に向かいます。
M君が乗馬センターの人と話をしてました。
M「撮影はこちらでお願いします」
ついていってみると、厩舎の建物内の
いちばん奥まったところで
真っ暗なところに蛍光灯が光る、
まるで築地の大型冷蔵庫のような
あるいは屋内倉庫のような馬小屋です。
小「ここやとバックが真っ黒やなぁ……馬は?」
M「これです」
馬術部出身のM君が連れて来たのは
よりによって黒に近い濃い鹿毛馬でした。
黒バックに黒い馬……。
ゆうときますが、テーマは
「楽しかった家族旅行」です。
小「うーん……せめて表に近いところで撮られへんか?」
M「あ、聞いてみます……」
そんなことをしてるうちに着替え終わった
秋野さんが降りて来はりました。
秋「どこで撮ります?ここですか?」
小「(まだ表はムリかな?しゃあない時間稼ぎや)
……そうですね、とりあえずここで何枚か撮って、
もう一カ所、今交渉してますんで」
秋「はい。どんな感じ?(とポーズを決めて)」
子役の大塚君と雀々さんも
集まり家族写真の呈……ですが、
皆、馬から遠〜い遠い。
小「もうちょっと近寄りましょうか」
雀「ええ?ホンマに……うわ、馬こわー」
小「笑顔で」
秋「はい」
カシャカシャ
雀「これ蹴れへん?」
小「まあ危なくない範囲で、もうちょっと近寄りましょ」
雀「フぉーン!ゆうてんで」
秋「やかましぃな、大丈夫やって」
カシャカシャ
……などと言いながら数枚撮ってますというと、
M君戻ってきて
「表側でもいいそうです」
小「よし。はい!ほんならもう一カ所撮りまーす!早よ馬連れて来い」
しかし日暮れてきてまして
屋根の有るギリギリ表側の繋ぎ場に出ても
シャッタースピードは1/15〜1/8秒しか切れません。
しかも背景はやっぱり黒く落ちた室内。
むむむむ……。
馬に近寄る雀々さんの顔は強ばってるし……
家族3人と馬を入れる構図も上手くきまらず……
秋野さんの飛行機の時間は迫るし……
さっきまでので結構いけてるか……?
いやいや!
折角ここで撮る以上もうちょい頑張ろ
……っと、試行錯誤しまして、
なんとか日暮れ間近まで撮りきりました。
小「はい!ほんなら、これで終了です」
と聞くが早いか二階に駆け上がる秋野さん。
我々も二階にあがり、機材などの後片付けをしていると
秋「ほな、お疲れさま!撮影もよろしくお願いします」
と怒濤の如く去って行かれました。
タクシーを見送った後、
脱力してロビーに座ってると、
雀々さんが横に座られて
雀「いやぁ……すごかったな」
小「嵐のようでしたね……」
小屋を吹き飛ばされた哀れな子豚のように
二人して座っていましたら
雀々さんの奥さんがお迎えに来られまして
雀々さんもお見送り……
小「では、撮影もよろしくお願いしまぁす」
雀「こちらこそ。ほなね」
……てなわけで、怒濤のスチル撮影は終了しました。
【後日談】
撮影現場で写真を見た秋野さんが一言……
秋「いや、写ってるやん!」
そら、そうです。
秋「あんな暗いとこで絶対写れへん思ってたんよ」
小「いやいや、まあ何とか……(ふっふっふ……)」
……てなことで、意外なお褒めに預かりましたとさ。
ちゃんちゃん!
(まだまだつづく)
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